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『ロビの開発者』高橋智隆×『ロビの事業責任者』木村裕人 〜特別対談PART2「デザインと技術のバランス」〜

ロビの生みの親であるロボットクリエイターの高橋智隆さんと、デアゴスティーニでロビプロジェクトの責任者を務める木村裕人による特別対談。今回は全3回のうちの第2回目です。(第一回目はこちらから)
※都合により、こちらの対談シリーズは全2回の配信となります。ご了承ください。

テーマは「デザインと技術のバランス」。それでは特別対談の模様をお楽しみください!

▽高橋智隆(たかはしともたか)
米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」にも選定されるなど、世界中から注目を集める日本のロボットクリエイター。デアゴスティーニから販売中の「ロビ」をはじめ、家電メーカーの広告塔として開発された「エボルタ」や、世界初のロボット宇宙飛行士「KIROBO」など、愛らしいデザインのロボットを多数世に生み出している。

▽木村裕人(きむらゆうじん)
1983年生まれ。カリフォルニア州立大学ノースリッジ校を卒業後、アップルジャパンを経て、2010年4月にデアゴスティーニ・ジャパン入社。同年始まったロビプロジェクトに参画し、マーケティングを担当。現在は、ロボット関連の全プロジェクトの責任者であるコンシューマーロボティクスセンター・マネージャーを務める。


デザインと技術のバランス



木村:ロビの魅力はいっぱいありますが、個人的には、アニメの世界から飛び出してきたかのようなデザイン性に惹かれていて、その機械とデザインのバランスが取れているロボットが今の所ロビしかいないのかなと。

高橋:個人的には僕のプロフェッションというのはそこにあると思っています。デザインと中身の設計の辻褄をどう合わせるか。それはものすごく特殊で面倒な作業で、だから同業他社っていないんですよ。

一般に製品開発では、デザイナーとエンジニアが分かれていますよね。なぜ分けられるのかというと、例えば自動車だと、スペース的に余裕があるので、ある程度自由なデザインを製品に反映することができます。それと、産業として歴史が長いので、構造が決まっていてその情報を両者が共有している。仕事の範囲も明確だし、やって良いこと駄目なことのルールを互いに理解していて、だから分業が可能なんです。

一方ロボットの場合は、まず歴史が浅く、デザインと設計の境目みたいなものが誰にもわかりません。そしてこの小さい体の中に色々入れようと思うと、様々な制約があって、デザイン的な視点からもエンジニアリング的な視点からもお互いに思い通りには決していきません。その最良の妥協点を見つけるのは極めて困難なんです。

木村:たしかにそこは高橋さんが得意とする領域ですよね。

高橋:さらにプラスして、ロボットにはキャラクター性という要素があります。アップル的なデザインはすごく洗練されていて美しいんですが、何だか味気なくなってしまう危険性があります。そこにもう一つの要素としてラー油みたいなものを一滴足してあげなくてはいけなくて、それはクリーンなデザインに対して、少し下品というか大衆的というか、そういうエッセンスを加えることでキャラクター性が生まれるんです。でも入れすぎてはいけない。

木村:それは個性なんですかね。クリーンにしていけばいくほど、どうしてもフラットになっていって、ただのツールになってしまう印象がありますね。

高橋:そうなんですよね。それは人間にも当てはまる話で、とても綺麗な顔をしている非の打ち所がない美人であっても、思い出せない顔というか存在感が薄くなることがある。例えばタレントさんって少し突っ込みどころがあるというか、本当の意味での美男美女ではないわけですよね。それがキャラクター性や個性なんだと思います。

木村:世の中的にはシンプルなものが良いというトレンドになっていると思うんですが、それだけだと流れ去っていってしまいますよね。

高橋:スマホがまさしくそうで、結局スマホに対する愛着というのはどんどんなくなっている。実は昔の、醜悪だけど個性的だったガラケーのほうが愛着があったんじゃないかと。一方スマホは、窓枠というか写真フレームのように、画面の邪魔をしないことに徹した結果、中のコンテンツは大事だけどそのもの自体の値打ちはなくなってきて、次のスマホに替えると前のものはいらなくなり、下取りなどで処分してしまう。

でもなぜか昔の彼女と撮ったプリクラが貼ってあるガラケーは未だに捨てずに持っていたりしがち(笑)

木村:電池のパックのふたの裏とかに貼りましたね(笑)

高橋:デコったりしてる人もいますよね。あれはデザイン的に見るとかなりマイナスなんでしょうけど、愛着の表れですよね。





普及のステップ



木村:ドローンもそうでしたが、新しいテクノロジーが出てくるとそれに対して規制やルール決めが進んでいきますよね。ロボットもこれから大型のものが出てきて、街中を歩き出すということになったら、危険物の一種として扱われてしまう可能性もあると思うんですが。


高橋:開発側としては、最初から規制に正面衝突してしまうようなものは、ビジネスモデル的には賢くないと思っています。つまり安全性やルールなど、社会から批判を浴びそうな要素に対して真正面から押し合いをするのは得策ではないんじゃないかな、と。

ロビは小型で、かつ実用品ではないため、重大な任務を背負わずにカジュアルな存在です。ロビのようなロボットが広まることで、社会の中でロボットというものを認知してもらいながら、新たな課題を見つけて、事前に大きな問題にならないように解決していけるんじゃないでしょうか。規制に引っかかるようなテクノロジーを強引に推し進めて、社会や規制が悪いなどという議論をしていては、無駄に時間を費やすことになってしまうと思うんですよね。


木村:それだと面白くないですよね。つまり入り方ということですかね?

高橋:そうですね。僕はそれを『普及のステップ』と呼んでいるんですけど、日本はそこがあまり上手ではないと思っています。どうしてルンバは広まったのか、テスラモーターズはなんで電気自動車で先に成功したのか、とかを考える必要があるんじゃないかと。ルンバの場合は、まずはおもちゃとして販売して、掃除ロボットの可能性を世の中に気付かせてから次の本格的なモデルを発売しました。テスラは、潰れかけの自動車会社製の車体とパソコンのバッテリーを合体させてスポーツカーとして売る作戦をとった。有り物を流用して開発コストを抑え、実用車ではない趣味的なクルマとしたことで、決して完璧な製品ではないながらも一定の支持を得た。

木村:そのステップの作り方は意識してやっていかないといけない部分ですよね。

高橋:日本のほうが技術はあったのに、などと負け惜しみを言っている人達は、そこの重要性に気づいていないわけですよね。

ロビは、ロボットという色んな困難がある分野で、ひとつのマイルストーンを見つけて、上手に販売できたのかなと思います。

木村:最近ロボットに携わっていて感じるのは、これは自分の使命だと思っていることでもあるんですけど、『一人でも多くの人にロボットを手に取ってもらう仕組み』が必要なんじゃないかなということです。まだまだロボットというとハードルが高く感じてしまう部分もありますし、他にもロボットが出てきていますが、どうしても数が足りない部分もあるので、少しでもロボットが身近になっていくといいな、と。

高橋:そうですね。見てもらうこと、手に取ってもらうこと、購入して使ってもらうこと。それによってロボットとは何なのか初めて理解できると思うんです。だから、その一助になるよう、これからも積極的に情報発信していこう思います。


Part3に続く


※都合により、こちらの対談シリーズは全2回の配信となります。第2回目の今回で終了となりますが、ご了承ください。


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